そのとき彼は、動けなかった。いや、動かなかったのだろう。
4月29日、日本武道館。全日本柔道選手権大会。
柔道男子100kg超級五輪代表というたった一つの切符を賭けた戦いが繰り広げられた。
異様な雰囲気に包まれている中で開会式が始まる。推薦出場である前回優勝の鈴木、準優勝の石井、そして、棟田、高井が入場。それぞれが大きな拍手と声援を受けての入場する。ケガを克服した石井が結果を出すのか、国際大会で実績のある棟田が念願の五輪を決めるのか、わずかな望みを残す高井が希望をつなげるのか。それとも・・・。
そして次の選手名が告げられたとき、誰よりも大きな声援が武道館いっぱいに沸きあがった。
井上康生。
武道館に集まった人間は全員理解している。彼が優勝を逃せば、それはすなわち引退につながることを。
井上の初戦は二回戦から。相手はもちろん、伝家の宝刀である『内股』を警戒してくる。ただこれまでは、どんなに「来る、来る」と分かっていても、世界中の猛者達が彼の『内股』にひれ伏してきたのだが・・・。
試合を決めたのは『内股』ではなく、出足払いだった。有効を奪っての優勢勝ち。何度も『内股』は仕掛けた。しかし・・・。明らかに実力の劣る初戦の相手にも、『内股』は決まらなかった。
三回戦。
やはり、彼は『内股』を繰り出す。しかし、決められない。以前であれば、面白いように相手の体を空中で回転させていた必殺技。今はもう、相手の体を浮かすこともままならない。それでも彼は『内股』を仕掛け続けた。
一本!!
決まり手は『内股』!? いや、隅落としだった。内股の体勢から大内狩り気味に懐へ入り、相手の背中を畳へ落とす技だ。こうして準々決勝進出を決めた。
井上以外の強豪も、順当にベスト8へコマを進めてきていた。
そして、準々決勝。午前11時から始まった大会だが、時計はすでに16時を指していた。
井上の準々決勝の対戦相手は、彼と同じく五輪出場へ一縷の望みを残す高井洋平。30kg以上の体重差がある相手である。試合が始まると、両者とも一進一退の攻防を見せる。井上は自分が信じた技『内股』にすべてを賭けていた。五輪出場へは勝つしかない高井も、積極的に前へ出続けた。
両者譲らず、試合終了まで残り10秒。
旗判定になれば井上が若干有利かと思われたが、彼はそれでも技を仕掛けた。井上がこれまで信じ続けた技、『内股』を。残り10秒を乗り切るのではなく、多くの栄光や挫折を共に味わい続けた『内股』で、高井を仕留めることを彼は選択したのだった。
大歓声?いや、悲鳴が武道館を包む。
畳の上では、自分よりも30キロ以上重い高井に押さえ込まれている井上がいた・・・。試合終了の6分が過ぎても、押さえ込みの時間は無情にも過ぎていく。
彼は、動けなかった。いや、動かなかったのだろう。
最後まで信じ続けた『内股』が返された。
高井の肩越しに見える天井の日の丸を見つめながら、すべてが終わっていくことを感じていたのだろう。押さえ込みから25秒経過を告げるブザーが鳴り響いた。
井上康生、合わせ技一本負け。
深く長い礼から頭を上げた時、彼の顔は笑っているように見えた。武道館の三階席からもわかるほど、なんともすがすがしい笑顔だった。こうして最後の挑戦を終えた彼は、畳を降りた。
振り返ってみれば、彼ほど愛された柔道家がいただろうか。彼の持つ人柄の良さ、礼儀正しい身の振舞い、言葉遣い、ひたむきさ。ただ強いだけの男ではなかった。
栄光も挫折も両方を味わった。家族の不幸も重なった。それでも挑み続ける姿に勇気をもらった人々も多いはずだ。私もその一人である。
今後は指導者を目指すとのことだ。イギリスへのコーチ留学も視野に入れているらしい。それならば彼が育てる選手に、夢を見ずにはいられない。伝家の宝刀、『内股』の夢を。
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Hero's Eye内股の夢 -080429_全日本柔道選手権大会- |
Hero 2008.05.06 |
4月29日、同日開催となったDREAM.2@さいたまS.A.観戦前に全日本柔道選手権大会の現地取材を敢行し、自身のブログにてリアルタイム速報をアップしていたHero(ヒーロー)さん。DREAM.2の観戦を遅らせてでも、目に焼き付けたかったその大会のコラムを掲載いたします。
marc_nas
marc_nas
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闘議(とうぎ)忘れ物 -田村vs船木戦決定- |
u-spirit 2008.03.28 |
田村潔司 vs 船木誠勝。
なんだか、そんな気がしていた。主催者にすれば、GPの日本人対決は、必ず次戦にどちらかかが生き残る都合のいいカード。PRIDEの時代から多用してきた手法:”リスクヘッジブッキング”。理由はどうあれ、田村潔司ファンである僕にとって、このカードは、とても意味がある。出来るならば、もっと早く実現させて欲しかった悲運な組み合わせ。
田村潔司の歴史の中で、唯一、登頂していない山、それが船木誠勝だった。田村が初めて見た船木は遥か尾根に写ったに違いない。同じ年齢なのに、田村が新弟子で入門したUWFでは、既に中核を担っていた大先輩。当時、天才と呼ばれていたのは船木の方だった。憧れた遠き山の麓に辿り着こうと、必死に鍛錬を重ねるも、負傷し復帰した直後に船木という山は忽然と田村の目の前から姿を消した。あの日から、二人は一度もリング上で交わる事が無かった。田村はアタックするチャンスさえ手に出来なかった。
前田日明と言う断崖から何度も落とされ、最後は死にもの狂いで登り切り、高田延彦という聳え立つ高嶺に流れ星の如く、閃光の一殺で凌駕した田村潔司。越えるべき”師”は越えてきた。だが、越えるべき”先輩”が残っていた。もう、誰もが忘れかけていた。互いの路で、船木が強かった頃、田村も強かった。どうして、あの時…。過去を怨んでも仕方ないのは、承知の上、どうしても交われなかった”U最高の遺伝子”と”U最後の遺伝子”が『U最強の遺伝子』を賭けて対峙するには、あまりに遅すぎた。
前田日明と船木誠勝が和解し対談した頃から、この”DNA”対決が決まる”予感”はあった。しかし、それは同時に10カウントの始まりを意味する。憧れ続けた”U”の終焉が確実に近付いてくる。Uの魂を、”最強”を、屈する事なく守り続けた田村潔司のフィナーレの幕が上がってしまう。田村潔司よ、答えは見つかったのか?いや、僕も目を逸らさず立ち会って見つけよう。最後に控える”越えてもらうべき後輩”との『U完結試合』に向けて。
Uオタクと笑いたいなら、笑えばいい。君らが精々、乳児の頃に、先輩に楯突いて真剣勝負の理想郷を進言した船木誠勝と何事にも屈せず、先輩の理想を貫いてきた田村潔司。這いつくばって生きてきた”男”の生き様は、たとえ、君達には無様に写っても、僕にとっては最強にしか見えない。彼らが居なかったら、今は無い。彼が居たから、先が有る。血と汗を流してきた背中に、途中から口出しないで一緒に見てくれ。何かを感じるさ。
なんだか、そんな気がしていた。主催者にすれば、GPの日本人対決は、必ず次戦にどちらかかが生き残る都合のいいカード。PRIDEの時代から多用してきた手法:”リスクヘッジブッキング”。理由はどうあれ、田村潔司ファンである僕にとって、このカードは、とても意味がある。出来るならば、もっと早く実現させて欲しかった悲運な組み合わせ。
田村潔司の歴史の中で、唯一、登頂していない山、それが船木誠勝だった。田村が初めて見た船木は遥か尾根に写ったに違いない。同じ年齢なのに、田村が新弟子で入門したUWFでは、既に中核を担っていた大先輩。当時、天才と呼ばれていたのは船木の方だった。憧れた遠き山の麓に辿り着こうと、必死に鍛錬を重ねるも、負傷し復帰した直後に船木という山は忽然と田村の目の前から姿を消した。あの日から、二人は一度もリング上で交わる事が無かった。田村はアタックするチャンスさえ手に出来なかった。
前田日明と言う断崖から何度も落とされ、最後は死にもの狂いで登り切り、高田延彦という聳え立つ高嶺に流れ星の如く、閃光の一殺で凌駕した田村潔司。越えるべき”師”は越えてきた。だが、越えるべき”先輩”が残っていた。もう、誰もが忘れかけていた。互いの路で、船木が強かった頃、田村も強かった。どうして、あの時…。過去を怨んでも仕方ないのは、承知の上、どうしても交われなかった”U最高の遺伝子”と”U最後の遺伝子”が『U最強の遺伝子』を賭けて対峙するには、あまりに遅すぎた。
前田日明と船木誠勝が和解し対談した頃から、この”DNA”対決が決まる”予感”はあった。しかし、それは同時に10カウントの始まりを意味する。憧れ続けた”U”の終焉が確実に近付いてくる。Uの魂を、”最強”を、屈する事なく守り続けた田村潔司のフィナーレの幕が上がってしまう。田村潔司よ、答えは見つかったのか?いや、僕も目を逸らさず立ち会って見つけよう。最後に控える”越えてもらうべき後輩”との『U完結試合』に向けて。
Uオタクと笑いたいなら、笑えばいい。君らが精々、乳児の頃に、先輩に楯突いて真剣勝負の理想郷を進言した船木誠勝と何事にも屈せず、先輩の理想を貫いてきた田村潔司。這いつくばって生きてきた”男”の生き様は、たとえ、君達には無様に写っても、僕にとっては最強にしか見えない。彼らが居なかったら、今は無い。彼が居たから、先が有る。血と汗を流してきた背中に、途中から口出しないで一緒に見てくれ。何かを感じるさ。
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総合格闘技向上委員会ver.25.0 儚く消える夢ではない -080315_DREAM.1- |
marc_nas 2008.03.17 |
ーPRIDE×HERO'S×K-1=DREAM。
ー地球上の格闘技、全てがここに集結。その名はDREAM。
そんな仰々しい名文句から地上波放送がスタート。夢路をたどらずにはいられない。
オープニングの全選手入場、煽り(試合前の紹介)VTRなど、今までのTBSのHERO'Sとは一戦を画す。今までの煽りVは、お涙頂戴の家族愛ばかりをフューチャーしていたが、今回は、ショートームーヴィー並の完成度を誇ったPRIDEの演出陣を組み入れ、かつ地上波の一般視聴者にも伝わる内容になっていた。僕にはもっと格闘技カラーを出して欲しいところだけれど。
※ちなみに会場では立木文彦さんのナレーション
解説は(PRIDE・TK高阪)×(HERO'S・須藤元気+山本KID)のコラボ。レフェリーも、(PRIDE・島田+野口)+(HERO'S・芹沢)と、これまたコラボ。マッチメイクだけでなく、すべてが夢の掛け合わせ。
そして、肝心のPRIDE vs. HERO'Sという図式の試合結果はというと、KID、ヒベイロ、宇野あたりのトップ所が出場していないとはいえ、大方の予想通りPRIDE勢の全勝となった。
もっとも僕の中での-70kgのランキングは以下の通り、PRIDE勢が占める。
1:五味隆典[PRIDE]
2:桜井マッハ速人[PRIDE]
3:青木真也[PRIDE]
4:ギルバート・メレンデス[PRIDE]
5:山本“KID"徳郁[HERO'S]
6:川尻達也[PRIDE]
7:J・カバウカンチ(J.Z.カルバン)[HERO'S]
8:石田光洋[PRIDE]
以下、V・ヒベイロ、J・ハンセン、宇野...。
※65kg級のKIDや76kg級のマッハも含み、BJペン、G・サンピエール除く
もちろん、HERO'Sのトーナメントを制したKIDやカルバンは強いのだが、対戦相手がリトマス試験紙としては、世界基準ではないから。しかし、そんな創り上げられたHERO達が、世界基準のPRIDE勢と相見えるのだ。難しい理屈は抜きにして、純粋な"格闘技のファン"としては、こんなワクワクは夢心地。夢うつつになっている場合ではない。
ー地球上の格闘技、全てがここに集結。その名はDREAM。
そんな仰々しい名文句から地上波放送がスタート。夢路をたどらずにはいられない。
オープニングの全選手入場、煽り(試合前の紹介)VTRなど、今までのTBSのHERO'Sとは一戦を画す。今までの煽りVは、お涙頂戴の家族愛ばかりをフューチャーしていたが、今回は、ショートームーヴィー並の完成度を誇ったPRIDEの演出陣を組み入れ、かつ地上波の一般視聴者にも伝わる内容になっていた。僕にはもっと格闘技カラーを出して欲しいところだけれど。
※ちなみに会場では立木文彦さんのナレーション
解説は(PRIDE・TK高阪)×(HERO'S・須藤元気+山本KID)のコラボ。レフェリーも、(PRIDE・島田+野口)+(HERO'S・芹沢)と、これまたコラボ。マッチメイクだけでなく、すべてが夢の掛け合わせ。
そして、肝心のPRIDE vs. HERO'Sという図式の試合結果はというと、KID、ヒベイロ、宇野あたりのトップ所が出場していないとはいえ、大方の予想通りPRIDE勢の全勝となった。
もっとも僕の中での-70kgのランキングは以下の通り、PRIDE勢が占める。
1:五味隆典[PRIDE]
2:桜井マッハ速人[PRIDE]
3:青木真也[PRIDE]
4:ギルバート・メレンデス[PRIDE]
5:山本“KID"徳郁[HERO'S]
6:川尻達也[PRIDE]
7:J・カバウカンチ(J.Z.カルバン)[HERO'S]
8:石田光洋[PRIDE]
以下、V・ヒベイロ、J・ハンセン、宇野...。
※65kg級のKIDや76kg級のマッハも含み、BJペン、G・サンピエール除く
もちろん、HERO'Sのトーナメントを制したKIDやカルバンは強いのだが、対戦相手がリトマス試験紙としては、世界基準ではないから。しかし、そんな創り上げられたHERO達が、世界基準のPRIDE勢と相見えるのだ。難しい理屈は抜きにして、純粋な"格闘技のファン"としては、こんなワクワクは夢心地。夢うつつになっている場合ではない。
地上波での放送順に各試合を振り返ってみる。
■ヨアキム・ハンセン×朴光哲
修斗→PRIDEに出場していたがHERO'Sに移籍したハンセン。長いリーチのせいなのか、ジャブにしろショートレンジの打撃が強く、長い足で、胴を四の字にロックし、グラウンドでも次々に極めを仕掛ける。修斗の体現する打・投・極、全ての面で朴を圧倒。「もっと来い」と挑発したりと面白い試合ではあったが、この試合をトップに持ってきたことが、今までのTBSからは信じられない。
■ミノワマン×イ・グァンボム
実際の会場での第一試合はこの試合。元プロ野球選手なんて肩書きを持つ相手を用意するあたり、HERO'Sイズムの残骸か。こんなクソみたいな相手でも、エンタテインしようとする美濃輪をリスペクト。
■桜井マッハ速人×門馬秀貴
本来の76kg級で減量苦がなかったのか、顔色のいい二人。得意の首相撲からの膝、ローが素晴らしくいいマッハ。それにしても、止めるのが遅すぎる。死んじゃでしまうよ。
■川尻達也×ブラック・マンバ
戦前の予想では、川尻の圧倒的勝利が多かったはず。蓋を開けると、腰が重くテイクダウンを許さず、グラウンドになってもマニュアルにはない破天荒なディフェンスと、下からの振り幅の長い膝で極めさせないマンバ。ただ、マンバ、ロープを掴みすぎ。イエローを与えるべき。
■エディ・アルバレス×アンドレ・ジダ
今大会、ベスト掘り出し者、そしてベストインパクトを残した試合。ジダのシュートボクセ仕込みの大振りでありながら、停まらない打撃により、2度のダウンを許したアルバレスだったが、回転の早いコンビネーションで盛り返す。そして、確かなレスリング技術とパウンドテクでボッコボコに。試合後にはコーナーポストからバク転まで披露。まごうことなき珠玉。この眩しい光、石田を持ってしても消せるのか。
■石田光洋×チョン・ブギョン
■宮田和幸×ルイス・ブスカペ
■永田克彦×アルトゥール・ウマハノフ
他の試合は完全ノーカットだった分、数十秒のダイジェストとなった3試合。ウマハノフ以外は順当に。ノーカットで観たかった。
■J.Z.カルバン×青木真也
一瞬で極められる関節を持つ青木と、一瞬でKO出来る打撃を持つカルバンの異常な緊張感を放つ、一進一退の攻防。この空気感を待っていた。PRIDE×HERO'Sの図式を最も感じられる試合だっただけに、まさかのノーコンテストは残念。どういう裁定が下され、どちらが勝ち上がるのかは一週間以内に会見にて。
■ミルコ・クロコップ×水野竜也
オープニングからCM明けまでウザいくらい、何度も煽られたミルコ凱旋。水野に、K-1での澤屋敷のシンデレラストーリーを、期待するもやはり予想通り。ミルコの次戦、噂されるマイティ・モー、バンナ、チェ・ホンマンに夢見る。
■ヨアキム・ハンセン×朴光哲
修斗→PRIDEに出場していたがHERO'Sに移籍したハンセン。長いリーチのせいなのか、ジャブにしろショートレンジの打撃が強く、長い足で、胴を四の字にロックし、グラウンドでも次々に極めを仕掛ける。修斗の体現する打・投・極、全ての面で朴を圧倒。「もっと来い」と挑発したりと面白い試合ではあったが、この試合をトップに持ってきたことが、今までのTBSからは信じられない。
■ミノワマン×イ・グァンボム
実際の会場での第一試合はこの試合。元プロ野球選手なんて肩書きを持つ相手を用意するあたり、HERO'Sイズムの残骸か。こんなクソみたいな相手でも、エンタテインしようとする美濃輪をリスペクト。
■桜井マッハ速人×門馬秀貴
本来の76kg級で減量苦がなかったのか、顔色のいい二人。得意の首相撲からの膝、ローが素晴らしくいいマッハ。それにしても、止めるのが遅すぎる。死んじゃでしまうよ。
■川尻達也×ブラック・マンバ
戦前の予想では、川尻の圧倒的勝利が多かったはず。蓋を開けると、腰が重くテイクダウンを許さず、グラウンドになってもマニュアルにはない破天荒なディフェンスと、下からの振り幅の長い膝で極めさせないマンバ。ただ、マンバ、ロープを掴みすぎ。イエローを与えるべき。
■エディ・アルバレス×アンドレ・ジダ
今大会、ベスト掘り出し者、そしてベストインパクトを残した試合。ジダのシュートボクセ仕込みの大振りでありながら、停まらない打撃により、2度のダウンを許したアルバレスだったが、回転の早いコンビネーションで盛り返す。そして、確かなレスリング技術とパウンドテクでボッコボコに。試合後にはコーナーポストからバク転まで披露。まごうことなき珠玉。この眩しい光、石田を持ってしても消せるのか。
■石田光洋×チョン・ブギョン
■宮田和幸×ルイス・ブスカペ
■永田克彦×アルトゥール・ウマハノフ
他の試合は完全ノーカットだった分、数十秒のダイジェストとなった3試合。ウマハノフ以外は順当に。ノーカットで観たかった。
■J.Z.カルバン×青木真也
一瞬で極められる関節を持つ青木と、一瞬でKO出来る打撃を持つカルバンの異常な緊張感を放つ、一進一退の攻防。この空気感を待っていた。PRIDE×HERO'Sの図式を最も感じられる試合だっただけに、まさかのノーコンテストは残念。どういう裁定が下され、どちらが勝ち上がるのかは一週間以内に会見にて。
■ミルコ・クロコップ×水野竜也
オープニングからCM明けまでウザいくらい、何度も煽られたミルコ凱旋。水野に、K-1での澤屋敷のシンデレラストーリーを、期待するもやはり予想通り。ミルコの次戦、噂されるマイティ・モー、バンナ、チェ・ホンマンに夢見る。
以上、簡単な寸評。総括的なことを言うと、僕らが胸震わせたPRIDEは、PRIDE以外の舞台では出せない。そんな期待はナンセンスなのだ。逆にみると、PRIDEでは足せなかったエッセンスも加味された。
これが、ケミストリーかと問われると、第一章にしては大いなる化学反応。メインの試合結果こそ残念ではあるが、両社の大連立なくしては実現出来なかったマッチメイクであることは確か。
僕が求めること。これは変わらず総合格闘技という競技の発展。
PRIDE消滅により、爆発的な格闘技ブームは儚くも消え、ライバルを失い迷走しかけたHERO'S。
同時に消えかけた総合格闘技の波。
もう一度ビッグウェーブをもたらすべく、墜ちたライバルをすくい上げたHERO'S。
両社が少し距離を置いて並立し、年末に両王者が対決するのが、最良の策なんだろうけど、それは夢物語。UFC×PRIDEしかり、利害関係の交錯する今の格闘技界おいては、難しい。
ならば企業のM&A(合併と吸収)のように、能力に合わせて、舵を取る方と、サポート役を臨機応変に担えばいい。事実、谷川Pは関与せず、元PRIDE陣営が演出〜マッチメイクまでを請け負う。
これだけの準備された舞台と、優秀なソフトを抱えているのだから、最大公約数を求められなければ、それはもう企業として罪だ。
大連立を唱えた時点で、世界最高の先導者なのだから、周りの見えぬ独裁者とならず、総合格闘技界をいい方向に扇動して欲しい。それは夢ではなく、使命であることを努々(ゆめゆめ)忘れないで欲しい。大会コピーが「誰かの夢ではない。あなたの夢である。」であるように。
これが、ケミストリーかと問われると、第一章にしては大いなる化学反応。メインの試合結果こそ残念ではあるが、両社の大連立なくしては実現出来なかったマッチメイクであることは確か。
僕が求めること。これは変わらず総合格闘技という競技の発展。
PRIDE消滅により、爆発的な格闘技ブームは儚くも消え、ライバルを失い迷走しかけたHERO'S。
同時に消えかけた総合格闘技の波。
もう一度ビッグウェーブをもたらすべく、墜ちたライバルをすくい上げたHERO'S。
両社が少し距離を置いて並立し、年末に両王者が対決するのが、最良の策なんだろうけど、それは夢物語。UFC×PRIDEしかり、利害関係の交錯する今の格闘技界おいては、難しい。
ならば企業のM&A(合併と吸収)のように、能力に合わせて、舵を取る方と、サポート役を臨機応変に担えばいい。事実、谷川Pは関与せず、元PRIDE陣営が演出〜マッチメイクまでを請け負う。
これだけの準備された舞台と、優秀なソフトを抱えているのだから、最大公約数を求められなければ、それはもう企業として罪だ。
大連立を唱えた時点で、世界最高の先導者なのだから、周りの見えぬ独裁者とならず、総合格闘技界をいい方向に扇動して欲しい。それは夢ではなく、使命であることを努々(ゆめゆめ)忘れないで欲しい。大会コピーが「誰かの夢ではない。あなたの夢である。」であるように。
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闘議(とうぎ)銭誤苦(SENGOKU) -080305_戦極- |
u-spirit 2008.03.17 |
銭勘定を誤り、苦しい船出となった戦極。
後に開催されるDREAMに擬え『いつまで、夢を・・・』と言ってる割には、オマージュの域を越えた酷似演出が一方的に”過剰意識感”を匂わせ、ガックリ。当日の客入りも”満員”と誇張するも、正味は招待券をバラ蒔いて席埋め、実券販売は半分程度だったと聞く。僕も当日、方々から招待券による観戦の誘いを受けた。でも、代々木に気は向いたが、体が向かなかった。同じ気持ちの友人宅にてケータリング・プチ・パーティー形式で5人でPV観戦。
後に開催されるDREAMに擬え『いつまで、夢を・・・』と言ってる割には、オマージュの域を越えた酷似演出が一方的に”過剰意識感”を匂わせ、ガックリ。当日の客入りも”満員”と誇張するも、正味は招待券をバラ蒔いて席埋め、実券販売は半分程度だったと聞く。僕も当日、方々から招待券による観戦の誘いを受けた。でも、代々木に気は向いたが、体が向かなかった。同じ気持ちの友人宅にてケータリング・プチ・パーティー形式で5人でPV観戦。
<第1試合>
●ファブリシオ・モンテイロ×ニック・トンプソン○
”ジョークみたいな団体”と揶揄されたBodogのウェルター王者であるトンプソンとDEEPで國奥、中尾、阿部兄を撃破した実力者ファブモンテが、互いの持ち味を出し切り、激闘を繰り広げる。本日のベストバウトも日本では馴染みの薄い2人に会場は全く盛り上がらず。僕はファブモンテが有利と見ていたが、結果は凌いだだけに見えたニック。戦極ルールもダメージ重視なのか。
<第2試合>
○川村亮×アントニオ・ブラガ・ネト●
出ました!グレイシーバッハっぽい試合。敢えてタックル、どこまでもタックル、最後までタックル。でも何故か?今回は、”グレイシーフュージョン”と登録されていた。なんだろう?川村亮は、もっとキレのある試合を展開する選手なのに、グレイシー”コック”に塩味にされてしまった。残念。
<第3試合>
●瀧本誠×エヴァンゲリスタ・サイボーグ○
柔道に打撃を足した人vsムエタイに柔術を足した人。寝+打か?打+寝か?総合に転向するなら、どちらが有利?そんな視点で観ようと思ったものの…。瀧本は、いや、吉田道場は、ローキックのカットや足関節対策の練習をしていないのだろうか?進歩を感じられず。
<第4試合>
●ピーター・グラハム×藤田和之○
ピーター・グラハム…後回し蹴りでバダ・ハリのアゴを粉砕して一躍有名になった男って皆、忘れているかも。前日の会見騒動は仕込み?と思える程、呆気無い秒殺一本での幕切れ。藤田のタックルは”しかけ”が、分かりやす過ぎ。
<第5試合>
○三崎和雄×シアー・バハドゥルザダ●
『三崎、ダメじゃん!』一緒にTV観戦していた友人の一言。いやいや、バハドゥルザダも現役修斗世界王者ですから。『やっぱ、ブラジル人は強いね!』いやいや、違います。苦戦を強いられていた三崎は、突っ込んできたバハドゥルザダを上手くがぶって、フロントチョークをガッチリ一閃。プロの試合としては、100点満点の試合内容。
<第6試合>
○五味隆典×ドゥエイン・ラドウィック●
感想は「おお!久しぶりの五味。あっ、終わりました」以上。五味のパンチは、やはりキレがあり重い事を再認した。盛り上がったが、本人の言うとおり消化不良。本当に戦極のリングで自分を出せるのか?
<第7試合>
●吉田秀彦×ジョシュ・バーネット○
総合のリングで、あんなにキレイなバックドロップを見れるなんて!喜びすぎて、テーブルのグラスを倒し友人宅のカーペットを汚してしまう。スンマセン。その後の試合中もジャーマン、パワーボムをそれとなく狙って仕掛けるジョシュを見ていて、事前の嫌な噂が一瞬、脳裏を過ぎる。そんな心配を他所にジョシュは吉田をリフトアップ、マウント、ツイストと次々に攻めまくる。まさにキャッチ・アズ・キャッチ・キャン!バテバテの吉田に、ダメ出し連発するセコンド柔くんのコメントが音声に「動かなきゃダメだ!」「腕外して!攻めて!いかないとダメだ!あいてるって!」堪り兼ねた解説席の郷野が「もっと、選手の気持ちを理解してあげて、声をかけた方がいい」と苦言。さすがご尤もな意見。そして、フィニッシュは3R。タップリ魅せ場を作っていたジョシュがアンクルホールドを仕掛け、逆足をクロスさせて膝十字に移行し、再び、アンクルを取って吉田は即、タップ。勝利したジョシュは意味不明なベルトを腰に巻かれていた。
●ファブリシオ・モンテイロ×ニック・トンプソン○
”ジョークみたいな団体”と揶揄されたBodogのウェルター王者であるトンプソンとDEEPで國奥、中尾、阿部兄を撃破した実力者ファブモンテが、互いの持ち味を出し切り、激闘を繰り広げる。本日のベストバウトも日本では馴染みの薄い2人に会場は全く盛り上がらず。僕はファブモンテが有利と見ていたが、結果は凌いだだけに見えたニック。戦極ルールもダメージ重視なのか。
<第2試合>
○川村亮×アントニオ・ブラガ・ネト●
出ました!グレイシーバッハっぽい試合。敢えてタックル、どこまでもタックル、最後までタックル。でも何故か?今回は、”グレイシーフュージョン”と登録されていた。なんだろう?川村亮は、もっとキレのある試合を展開する選手なのに、グレイシー”コック”に塩味にされてしまった。残念。
<第3試合>
●瀧本誠×エヴァンゲリスタ・サイボーグ○
柔道に打撃を足した人vsムエタイに柔術を足した人。寝+打か?打+寝か?総合に転向するなら、どちらが有利?そんな視点で観ようと思ったものの…。瀧本は、いや、吉田道場は、ローキックのカットや足関節対策の練習をしていないのだろうか?進歩を感じられず。
<第4試合>
●ピーター・グラハム×藤田和之○
ピーター・グラハム…後回し蹴りでバダ・ハリのアゴを粉砕して一躍有名になった男って皆、忘れているかも。前日の会見騒動は仕込み?と思える程、呆気無い秒殺一本での幕切れ。藤田のタックルは”しかけ”が、分かりやす過ぎ。
<第5試合>
○三崎和雄×シアー・バハドゥルザダ●
『三崎、ダメじゃん!』一緒にTV観戦していた友人の一言。いやいや、バハドゥルザダも現役修斗世界王者ですから。『やっぱ、ブラジル人は強いね!』いやいや、違います。苦戦を強いられていた三崎は、突っ込んできたバハドゥルザダを上手くがぶって、フロントチョークをガッチリ一閃。プロの試合としては、100点満点の試合内容。
<第6試合>
○五味隆典×ドゥエイン・ラドウィック●
感想は「おお!久しぶりの五味。あっ、終わりました」以上。五味のパンチは、やはりキレがあり重い事を再認した。盛り上がったが、本人の言うとおり消化不良。本当に戦極のリングで自分を出せるのか?
<第7試合>
●吉田秀彦×ジョシュ・バーネット○
総合のリングで、あんなにキレイなバックドロップを見れるなんて!喜びすぎて、テーブルのグラスを倒し友人宅のカーペットを汚してしまう。スンマセン。その後の試合中もジャーマン、パワーボムをそれとなく狙って仕掛けるジョシュを見ていて、事前の嫌な噂が一瞬、脳裏を過ぎる。そんな心配を他所にジョシュは吉田をリフトアップ、マウント、ツイストと次々に攻めまくる。まさにキャッチ・アズ・キャッチ・キャン!バテバテの吉田に、ダメ出し連発するセコンド柔くんのコメントが音声に「動かなきゃダメだ!」「腕外して!攻めて!いかないとダメだ!あいてるって!」堪り兼ねた解説席の郷野が「もっと、選手の気持ちを理解してあげて、声をかけた方がいい」と苦言。さすがご尤もな意見。そして、フィニッシュは3R。タップリ魅せ場を作っていたジョシュがアンクルホールドを仕掛け、逆足をクロスさせて膝十字に移行し、再び、アンクルを取って吉田は即、タップ。勝利したジョシュは意味不明なベルトを腰に巻かれていた。
<大会総括>
5月、6月に連続開催との告知よりも、今回、露骨に見えた彼らの本音。「業界主導権は我が手に!共存など不要!」やっぱり、連盟名乗れども、他団体とコミットする気は毛頭無い様だ。そんな彼らから競技に対する”愛情”は感じられない。正直、期待薄だ。豊富な資金源をバックにネームバリューのある選手や実力者を揃えても、何かが足りない気がする。ビジネスとしても、エンターテーメントとしても、中途半端な感じは否めないし、”モノマネ”では本流に成れない。それでも亜流か我流か分からないが、独自にファンの支持を得るには、この先、大会を地道に重ねて行けば道も開くだろう。だが、赤字だからとすぐに止めてしまえば、格闘技ファンから、総スカンを喰らうのは目に見えている。そんな今の”戦極”は、何処となく、かつてプロレス界に一石を投じた集団”SWS”に空気が似ている。
『いつまで、夢を・・・』とDREAMに敵対心を剥き出しにしていたが、逆に聞かれるだろう。”総合対策が不十分な柔道家に、いつまで夢を?”開催さえすれば、簡単に儲かるとでも夢見ていたの?”汗を流さず金で作ったリングに、何が生まれるのだろう。ファンとして”魅力”を感じれないのは、皮肉にも彼ら自身が否定した”夢”が戦極のリングには見えて来ないからだ。戦極運営陣に今、一番必要なものは、総合格闘技に対するアイデンティティーだと思う。
5月、6月に連続開催との告知よりも、今回、露骨に見えた彼らの本音。「業界主導権は我が手に!共存など不要!」やっぱり、連盟名乗れども、他団体とコミットする気は毛頭無い様だ。そんな彼らから競技に対する”愛情”は感じられない。正直、期待薄だ。豊富な資金源をバックにネームバリューのある選手や実力者を揃えても、何かが足りない気がする。ビジネスとしても、エンターテーメントとしても、中途半端な感じは否めないし、”モノマネ”では本流に成れない。それでも亜流か我流か分からないが、独自にファンの支持を得るには、この先、大会を地道に重ねて行けば道も開くだろう。だが、赤字だからとすぐに止めてしまえば、格闘技ファンから、総スカンを喰らうのは目に見えている。そんな今の”戦極”は、何処となく、かつてプロレス界に一石を投じた集団”SWS”に空気が似ている。
『いつまで、夢を・・・』とDREAMに敵対心を剥き出しにしていたが、逆に聞かれるだろう。”総合対策が不十分な柔道家に、いつまで夢を?”開催さえすれば、簡単に儲かるとでも夢見ていたの?”汗を流さず金で作ったリングに、何が生まれるのだろう。ファンとして”魅力”を感じれないのは、皮肉にも彼ら自身が否定した”夢”が戦極のリングには見えて来ないからだ。戦極運営陣に今、一番必要なものは、総合格闘技に対するアイデンティティーだと思う。
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闘議(とうぎ)沈まぬ太陽はない、だが、再び昇らぬ太陽もない |
u-spirit 2008.02.14 |
「沈まぬ太陽はない、だが、再び昇らぬ太陽もない」
3年以上沈んでいた太陽が、今再び、激しく躍動し閃光を放ち光り輝いた。舞台も違い、暫定ではあるものの、UFCヘビー級のチャンピオンベルトを高々と掲げ、更なる高み”統一王座”を呼びかけた。
完全に負け試合だった。2m超の巨人の前で柔術マジシャンは小さく見えた。ティム・シルビアに対応する為にウェイトは絞らず、自身、最重量で挑んだ試合は、動けず、打てず、転がせずとノゲイラらしくない内容で、時折、シルビアの巨漢パンチをモロに喰らいながら、無情にラウンドだけが過ぎて行く。
如何ともし難い体格差か…半ば諦めていた時、テイクダウンからスイープ、そしてサイドから顔を跨いで罠をはり、まんまと立ち上がろうとしたティム・シルビアに電光石火のフロントチョーク。鮮やか過ぎて観客は呆気にとられる。振り返ってみればPRIDEでも再三、大逆転劇を魅せてくれていたミノタウロ。彼が最も優れていたのは、マジシャンと呼ばれる柔術テクニック以上に、メンタル面とフィジカル面の群を抜いた”強靭さ”だった事を再認させられる。
確かにベルトを奪取したものの、前回のヒース・ヒーリング戦と同様、ノゲイラにとって不甲斐無い試合内容だった。オクタゴンにアジャストしきれていないと指摘されていた点も、殆ど改善が見られなかった。
ノゲイラと共にPRIDEで一時代を築いたヴァンダレイ・シウバも、台頭しつつあったマウリシオ・ショーグンも、PRIDEから移籍した選手が、金網内で惜敗する姿を一体、何試合、観て来ただろう。あんなにPRIDEのリングで輝いていた選手たちの度重なる敗戦、そして、辛うじて勝利できたノゲイラの苦戦に、UFCというオクタゴンに潜む穴を考えさせられる。
総合の現役選手曰く、一番大きく違うのはリングと金網の広さの違い、そして、下に敷かれたマットの柔らかさの違い、空間が同じ様で全くの別物。言葉や理論では理解できない。慣れるには多少の時間が必要である。と聞いた。正直、素人の僕にはピンと来ないが、これだけ、元PRIDE選手の苦戦を目の当たりにすれば、道理が通る。
ただ、今はミノタウロの勝利を祝福したいし、先日、他界された百瀬氏も、ご存命であれば大そう喜んでいたに違いない。
「柔よく剛を制す」
武道者がアメリカンサイズの巨漢ヤンキーを締め上げタップアウトを奪うシーンを僕は待ちわびていた。そして、練習の鬼であるノゲイラなら、統一王座戦に向けて、必ず欠点は克服してくる。今までも、そうだった。心配はあまりしていない。だけど、こんな素晴らしい試合が、総体的に殴り合いだけを好む風潮のアメリカ人しかLIVEで楽しめない現状が恨めしい。
3年以上沈んでいた太陽が、今再び、激しく躍動し閃光を放ち光り輝いた。舞台も違い、暫定ではあるものの、UFCヘビー級のチャンピオンベルトを高々と掲げ、更なる高み”統一王座”を呼びかけた。
完全に負け試合だった。2m超の巨人の前で柔術マジシャンは小さく見えた。ティム・シルビアに対応する為にウェイトは絞らず、自身、最重量で挑んだ試合は、動けず、打てず、転がせずとノゲイラらしくない内容で、時折、シルビアの巨漢パンチをモロに喰らいながら、無情にラウンドだけが過ぎて行く。
如何ともし難い体格差か…半ば諦めていた時、テイクダウンからスイープ、そしてサイドから顔を跨いで罠をはり、まんまと立ち上がろうとしたティム・シルビアに電光石火のフロントチョーク。鮮やか過ぎて観客は呆気にとられる。振り返ってみればPRIDEでも再三、大逆転劇を魅せてくれていたミノタウロ。彼が最も優れていたのは、マジシャンと呼ばれる柔術テクニック以上に、メンタル面とフィジカル面の群を抜いた”強靭さ”だった事を再認させられる。
確かにベルトを奪取したものの、前回のヒース・ヒーリング戦と同様、ノゲイラにとって不甲斐無い試合内容だった。オクタゴンにアジャストしきれていないと指摘されていた点も、殆ど改善が見られなかった。
ノゲイラと共にPRIDEで一時代を築いたヴァンダレイ・シウバも、台頭しつつあったマウリシオ・ショーグンも、PRIDEから移籍した選手が、金網内で惜敗する姿を一体、何試合、観て来ただろう。あんなにPRIDEのリングで輝いていた選手たちの度重なる敗戦、そして、辛うじて勝利できたノゲイラの苦戦に、UFCというオクタゴンに潜む穴を考えさせられる。
総合の現役選手曰く、一番大きく違うのはリングと金網の広さの違い、そして、下に敷かれたマットの柔らかさの違い、空間が同じ様で全くの別物。言葉や理論では理解できない。慣れるには多少の時間が必要である。と聞いた。正直、素人の僕にはピンと来ないが、これだけ、元PRIDE選手の苦戦を目の当たりにすれば、道理が通る。
ただ、今はミノタウロの勝利を祝福したいし、先日、他界された百瀬氏も、ご存命であれば大そう喜んでいたに違いない。
「柔よく剛を制す」
武道者がアメリカンサイズの巨漢ヤンキーを締め上げタップアウトを奪うシーンを僕は待ちわびていた。そして、練習の鬼であるノゲイラなら、統一王座戦に向けて、必ず欠点は克服してくる。今までも、そうだった。心配はあまりしていない。だけど、こんな素晴らしい試合が、総体的に殴り合いだけを好む風潮のアメリカ人しかLIVEで楽しめない現状が恨めしい。
