Weekly Column

Hero's Eye

『プロレスラー』像

Hero
2004.02.22
 2月某日、かねてからのBSE(牛海綿状脳症)による影響で、とうとう街から牛丼が姿を消した。『牛丼がない!!』と暴れだして逮捕される輩も出現したらしいが、プロレス界でも暴れている『牛』がいた!!そう、新日本プロレスの猛牛こと天山広吉だ。
 世間が牛丼消滅に揺れる2月15日、横浜でPRIDE武士道、沖縄でK-1JAPAN、そして両国ではチャンピオン中邑真輔のベルト返上によって空位になったIWGPヘビー級王座の決定トーナメントが行われる新日本プロレスという、一日遅れのバレンタイン興行戦争が繰り広げられていた。
 さて、このトーナメントには天山もエントリーされていたのだが、ほんの2か月前までは天山がチャンピオンだったわけだ。そう、新日本の若き天才、中邑真輔に奪取されるまでは。その試合を私は大阪府立体育館で観戦していたのだが、序盤から試合のペースは一方的に天山のものだった。だが、7度目の挑戦でやっと手に入れたベルトを、一瞬の間接技による大逆転で易々と手放してしまったのだ。伝統のIWGP選手権試合であれほどあっけない幕切れは初めてだったかもしれない。総合格闘技の試合であれば、さほど驚くこともなかっただろう。しかし、新日本プロレスのマット上であのような事故的な幕切れは、心にモヤモヤしたものが残ったというのが率直な感想だったのだ。年末のK-1に中邑をIWGPチャンピオンの『プロレスラー』として出場させようとした新日本の策略かと疑いもしたぐらいだ。こうして中邑は年末年始の壮絶な戦いを経てスターへの階段を上って行ったわけだ。さて一瞬のうちに王座から転落した天山はどうだったのだろうか。
 その後の天山の試合の中でひとつ印象に残ったものがあった。2月1日に行われたIWGPタッグ選手権試合で、鈴木みのる/高山善廣組と対戦した天山は、試合中に鈴木からマウントポジションを奪うとパンチやチョップではなく、顔面へ頭突きをぶち込んだのだ。これはPRIDEなどのいわゆる総合格闘技では反則である。パンクラスで総合格闘技を経験してきた鈴木からしてみれば、あの場面で頭突きがくるなどとは考えもしなかったのではないかろうか。ここに総合格闘技に対して『プロレスラー』の強さや厳しさにこだわる天山を見た気がしたのだ。
 数日後に行われたIWGP王座決定トーナメントでも、私の大方の予想どおりにその厳しさを見せた天山が第35代チャンピオンに返り咲いたのだった。これは新日本プロレスの計算や目論みではないと信じたいところだ。今後も天山には『プロレスラー』としてさらなる厳しさを見せていってほしいものだ。近い将来に中邑との真の王者を決める戦いが待っている。その戦いから新日本プロレスの求める『プロレスラー』像が見えてくるのではないだろうか
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