地上波でほぼ市民権を得た感のある、このカテゴリー。
少し前まで軽中量級の立ち技系の大会の客層と言えば柄の悪い中年、コアな格闘技ファン、選手関係者、そして、招待客。会場の女性と言えば夜の蝶か選手の彼女。そんな殺伐とした空気はまるで後楽園ホールにいてココは歌舞伎町か?と感じる雰囲気だった。
ところが、K−1MAXのお陰で若年層、特に女性ファンが急増し挙って来場するようになり、その現象に一番、面食らったのはマサト以外の黄色い声援など無縁の世界で過ごしてきた出場選手達だっただろう。キックボクシングの大会が地上波のゴールデンで流れている現状に時代とは常に変化していくものだと思わされる。
そして、今回、闘うコスプレイヤー長島”自演乙”雄一郎が参戦したことで「新たなるコアな客層も来場しています。」とのコメントと共にコスプレイヤーの映像がゴールデンタイムに流れるという歴史的な日に。
そもそも格闘技マニアとコスプレを含むアニメマニアは分析・妄想・陶酔を繰り返すなどの共通項が多く、実際、アニメ好きで格闘技好きと言う人も少なくない。
確かに来場したコスプレイヤー達はライブは初めてだったかもしれないが、ウチワやタオルを持って試合そっちのけで選手個人にしか関心のないキャーキャーと叫ぶギャル達よりはルールや選手について、特技の分析・妄想を活かし詳細な情報に精通していたりするんだろう。
長島選手の特異な入場は賛否両論あるが、リング上でコールされる前に間に合うように急いでタイツを脱いでる姿や、試合前に対戦相手と対峙しても目を合わせぬ姿を見てシャイで御人好しな人間性を見た。
本来、選手としても新日本キックでは無敗でMAXまで登りつめた実力はホンモノで谷川氏の称した「たて拳」所謂、日本拳法の”直突き”は彼の必殺技であり、ボクシング類などのパンチとは異なり肩を回転させずにノーモーションで繰り出される。その姿は放送の解説で擬えられた渡辺二郎より、古いビデオで見た伝説のキックボクサー元K−1レフリー猪狩元秀を彷彿とさせ対戦相手に直突きは見事にヒットしており、彼の無敗記録が伊達ではない事をMAXの観客に見せ付けた。
そして、長島選手について、どうしても記しておきたいのは、彼が今大会、偶発的であるが反則攻撃を2度も受け深刻なダメージを負ってしまったこと。
1試合目の肘、2試合目のバッティング、それでも彼は心折れる事なく闘い続け、相手に敬意を表してリングを降り、引揚げる途中の通路にて初めての敗戦に蹲って泣き崩れ悔しさを滲ませた。
その光景はあまりに気の毒なり。
コスプレヤーに偏見はあるかもしれないが、リング上の彼は立派なファイターだった。だからこそ彼が王者となる日がそう遠くない気がした。
そんな不運もあれば、対照的に幸運を手にした選手もいた。
一回戦敗退という失態から相手の鼻骨骨折という幸運により、繰上げ復活となった城戸康裕。しかし、それ以上の幸運に恵まれたのが城戸選手を迎え撃った小比類巻太信。
復活で次戦に駒を進めるも初戦で深刻なダメージを負っていた城戸選手に活路を見出す余力は残っておらず、小比類巻選手が順当に仕留めて復活をアピール。この試合を勝ち上がった小比類巻選手はそのまま優勝し世界トーナメント出場権を獲得した。
ここ数年、惜敗、惨敗、完敗と負け続きで、出口の見えない丼底で、もがき苦しみ何とか過去の知名度だけで首の皮一枚を繋げ、日本代表トーナメントにも滑り込み的、出場が否めなかった小比類巻選手。
強くなれるならと所属ジムも名前も変えた男の見事な復活劇!と賞賛したいところだが少し”不甲斐無い”試合内容だった。
以前のライバルであった現MAX世界王者の魔裟斗は解説席に陣取り各選手の長所・短所を的確に語り、格の違いを闘わずして見せつけていたし、もう一人のエース、佐藤嘉洋はスーパーファイトで完勝して試合内容で格の違いを見せ付けた。前者2人と比較すると小比類巻選手は実力差があるように見受けられた。
先に述べた長島選手以外にも新鋭が続々と頭角を現した今大会、前年王者の城戸選手でさえ、初戦敗退という結果に競技として繁栄し裾野が広がるということは、選手層が拡充される分だけ、下克上のサイクルも短くなるという現実を目の当たりさせられた。
選手間の生き残りを賭けたサバイバルは今後、より一層過酷となっていくだろう。
運も実力の内とは言うものの、そんな中で生き残っていける力強さを今回の小比類巻太信という男に感じる事はできなかった。計り知れないオーラというか輝きを感じられなかった。
果して、それが要らぬ心配なのかは秋の世界トーナメントで明らかとなる。
闘議(とうぎ)運という魔物 -K-1 MAX 2009 JAPAN トーナメント- |
u-spirit 2009.03.04 |
闘議(とうぎ)3.8 夢見月 -DREAM.7 フェザー級GP開幕- |
u-spirit 2009.03.03 |
DREAM.7フェザー級GP開幕を一言で表するなら「夢のオールスター戦」である。
この-65kgという階級のメジャー大会が開催される事を個人的に何年も待ち望んでいた。
今世紀に入ってから”総合格闘技”という新ジャンルはメディアを通じてムーブメントを巻き起こし急速に世界中に広まった。
その原動力となったのはヘビー級やミドル級などの重量級の選手たちだった。生まれながらに神から与えられし肉体を武器に規格外の大男が繰り広げた死闘は常識や想像を遥かに超え、観衆はそこに魅了された。
だから、今後も総合格闘技を代表する階級であることは間違いないが、本来、”総合”の”格闘技”として最も内容が濃縮されている階級は現実味が感じられる”一般規格者”の闘い。
一般規格とは、自分たちと大差ない、いや、ともすれば自分達よりも小さい背丈と骨格しか持たぬフェザーやウェルター級と呼ばれる日本人に最も適した軽量階級だ。
彼らは凄い。
身体を鍛え抜き、技術を磨いた努力の”結晶”を音速で爆発させる姿は正に神である。中でもフェザー級は、その競技人口の多さ故に複数の団体にて王位が乱立していた。
そして格闘技ファンの間で長年に亘り浮かび上がっていた疑問がある。
「じゃあ、一体、誰が一番強いのか?」
このシンプルな疑問がようやく解決される。
それはDREAM.7だけでなく戦極でも開催されるGPも含めて、フェザー級というカテゴリーのツワモノたちが合間見える事で世界ランクが明される。
だから、組み合わせを耳にした時点で胸が踊るが今回ばかりは予測は困難。後に”事実上の決勝だった”と称される可能性が全試合にある。それ程、出場選手の実力が拮抗した大会なのである。
だから下馬評も書けない。人気、実力共に本当にTOPとして君臨している山本KIDだが、その評価は正しかったのか?間違いだったのか?その答えが間も無く出る。
もっと早く開催すべきだった。K−1MAX人気を尻目に悔しく感じていた。フェザー級も確実に人気を得られる要素があるのに。と地団駄を踏む日々。実際、どこの団体や大会でもフェザーの試合や選手は相当な人気があった。
その理由は”日本人が強い”という上に一度見たら忘れないインパクトの強い超個性派が顔を揃えているからで、何故?そんな個性的な選手が集中するのか?と不思議に思えたが、ひとつの答えとして選手過多な状況で、人より目立たないと伸し上って行けないからと推測する。
最激戦区ならではの切実な事情に因るのもだろうと。試合を見れば必ず、おもしろくて、神々しくもあり、ヒューマニズムとシンパシーを感じる。そして今大会を機に軽量級の凄さを多くの人が理解してくれればいいと願う。
必ずこの階級は今後、日本における総合格闘技の人気復活のキーとなり業界の中心と成り得る。
そんな今大会のキャッチコピー「この強さを軽く見るな」是正に適切表現である。
この-65kgという階級のメジャー大会が開催される事を個人的に何年も待ち望んでいた。
今世紀に入ってから”総合格闘技”という新ジャンルはメディアを通じてムーブメントを巻き起こし急速に世界中に広まった。
その原動力となったのはヘビー級やミドル級などの重量級の選手たちだった。生まれながらに神から与えられし肉体を武器に規格外の大男が繰り広げた死闘は常識や想像を遥かに超え、観衆はそこに魅了された。
だから、今後も総合格闘技を代表する階級であることは間違いないが、本来、”総合”の”格闘技”として最も内容が濃縮されている階級は現実味が感じられる”一般規格者”の闘い。
一般規格とは、自分たちと大差ない、いや、ともすれば自分達よりも小さい背丈と骨格しか持たぬフェザーやウェルター級と呼ばれる日本人に最も適した軽量階級だ。
彼らは凄い。
身体を鍛え抜き、技術を磨いた努力の”結晶”を音速で爆発させる姿は正に神である。中でもフェザー級は、その競技人口の多さ故に複数の団体にて王位が乱立していた。
そして格闘技ファンの間で長年に亘り浮かび上がっていた疑問がある。
「じゃあ、一体、誰が一番強いのか?」
このシンプルな疑問がようやく解決される。
それはDREAM.7だけでなく戦極でも開催されるGPも含めて、フェザー級というカテゴリーのツワモノたちが合間見える事で世界ランクが明される。
だから、組み合わせを耳にした時点で胸が踊るが今回ばかりは予測は困難。後に”事実上の決勝だった”と称される可能性が全試合にある。それ程、出場選手の実力が拮抗した大会なのである。
だから下馬評も書けない。人気、実力共に本当にTOPとして君臨している山本KIDだが、その評価は正しかったのか?間違いだったのか?その答えが間も無く出る。
もっと早く開催すべきだった。K−1MAX人気を尻目に悔しく感じていた。フェザー級も確実に人気を得られる要素があるのに。と地団駄を踏む日々。実際、どこの団体や大会でもフェザーの試合や選手は相当な人気があった。
その理由は”日本人が強い”という上に一度見たら忘れないインパクトの強い超個性派が顔を揃えているからで、何故?そんな個性的な選手が集中するのか?と不思議に思えたが、ひとつの答えとして選手過多な状況で、人より目立たないと伸し上って行けないからと推測する。
最激戦区ならではの切実な事情に因るのもだろうと。試合を見れば必ず、おもしろくて、神々しくもあり、ヒューマニズムとシンパシーを感じる。そして今大会を機に軽量級の凄さを多くの人が理解してくれればいいと願う。
必ずこの階級は今後、日本における総合格闘技の人気復活のキーとなり業界の中心と成り得る。
そんな今大会のキャッチコピー「この強さを軽く見るな」是正に適切表現である。
闘議(とうぎ)3.8 暮春 -辰吉丈`一郎- |
u-spirit 2009.03.02 |
昨年、2008年10月タイで「死亡遊戯のテーマ」が流れた。
それは辰吉丈`一郎にとって5年ぶりの復活を意味する曲だった。
強制引退に該当する37歳を跨ぎ、特例措置とされた5年以内の再起戦の夢も絶たれ、JBC発給のライセンスを失効させ、上がれるリングを求めて辿り着いたタイ。
「ボクシングがしたい」と周囲の引退勧告にも耳を貸さず自分の意志を貫き執念で掴んだ試合だったが、5年もの試合ブランクと年齢による肉体の衰えは顕著であり、過去、リアルタイムで辰吉丈`一郎の軌跡を見守ってきた1人のファンとして絶え難き現実だった。
所属ジムや関係者、JBCが何も意地悪で辰吉の路を絶った訳じゃないと現役続行を望んだ本人の試合で遅ればせながら悟る。
グットシェイプとはとても言い難い張りも艶も損なわれた肉体、辰吉の象徴であった神がかり的なウェービングとスウェーは陰り、多くのブローを被弾して何度も動きが止まる。
試合の組み立もブランクで鈍化していたのに、衰退をカバーすべく老獪なテクニックで対抗する訳でもなく、ただ、今まで通り”辰吉らしい”真っ向勝負のシバキ合い。
勝利はしたが辰吉本人も内容に納得できずに笑みは無く、遠いタイランドまで応援に駆けつけた後援会とファンの辰吉コールだけがあの頃のまま場内に木霊していた。
本当にこれでいいのか?後、数試合を重ねれば感覚を取り戻せるのか?
そんな疑念が脳裏を過ぎる。
周囲が抱えた苦悩や葛藤、本人の意地と競技の安全維持、周囲は正しい見識で対応し、本人は己に正直な答えを出した。だから、双方間違いはないのである。
辰吉丈`一郎という男にとって、引退して緩やかな余生など”生きながらにして死”その先は”破滅”だと聞かされても、そこに光が射す可能性が”0”でない限り、目指し続けるという信念により、リング上で絶命しても本望である。
”我の魂、生涯不変、成り”と周囲に抗い自分には抗えず宣言した。
これでいいんだろうか?ファンとして見守るしか術のない僕は復帰戦の映像を見て複雑な涙が込み上げてきた。
立場が置き換わり親友、親族ならば諸手でこの路を後押しできただろうか?と自問する。
試合後、辰吉が控え室へと戻った映像に懐かしい顔が出てくる。かつて辰吉を完膚なきまでに叩きのめした最強の王者ウィラポンが激励に訪れていた。当時、最強ボクサーと信じて已まなかった辰吉の玉砕ぶりに「日本人は誰もウィラポンに勝てない」と諦めた。
しかし、辰吉が休んでいる間に長谷川穂積がウィラポンから王座を奪取してから、皮肉にも辰吉の復帰戦が行われたつい10日前に7度目の防衛を果たしたばかり。
果して長谷川まで辿り着けるという一縷の望みが叶う隙間があるのだろうか?
もう、心から応援していた僕も分からなくなった。
タイでのランキング1位となった辰吉丈`一郎はこの3月8日に復帰第二戦となる正念場を迎える。
ボクシングを愛した男の今度の相手は生半な選手ではない。
期待はするが、こんなに切なく身に抓まされる思いで待つ試合は無い。
”あしたのジョー”の様に燃え尽きないでくれと無事を祈るのみ。
それは辰吉丈`一郎にとって5年ぶりの復活を意味する曲だった。
強制引退に該当する37歳を跨ぎ、特例措置とされた5年以内の再起戦の夢も絶たれ、JBC発給のライセンスを失効させ、上がれるリングを求めて辿り着いたタイ。
「ボクシングがしたい」と周囲の引退勧告にも耳を貸さず自分の意志を貫き執念で掴んだ試合だったが、5年もの試合ブランクと年齢による肉体の衰えは顕著であり、過去、リアルタイムで辰吉丈`一郎の軌跡を見守ってきた1人のファンとして絶え難き現実だった。
所属ジムや関係者、JBCが何も意地悪で辰吉の路を絶った訳じゃないと現役続行を望んだ本人の試合で遅ればせながら悟る。
グットシェイプとはとても言い難い張りも艶も損なわれた肉体、辰吉の象徴であった神がかり的なウェービングとスウェーは陰り、多くのブローを被弾して何度も動きが止まる。
試合の組み立もブランクで鈍化していたのに、衰退をカバーすべく老獪なテクニックで対抗する訳でもなく、ただ、今まで通り”辰吉らしい”真っ向勝負のシバキ合い。
勝利はしたが辰吉本人も内容に納得できずに笑みは無く、遠いタイランドまで応援に駆けつけた後援会とファンの辰吉コールだけがあの頃のまま場内に木霊していた。
本当にこれでいいのか?後、数試合を重ねれば感覚を取り戻せるのか?
そんな疑念が脳裏を過ぎる。
周囲が抱えた苦悩や葛藤、本人の意地と競技の安全維持、周囲は正しい見識で対応し、本人は己に正直な答えを出した。だから、双方間違いはないのである。
辰吉丈`一郎という男にとって、引退して緩やかな余生など”生きながらにして死”その先は”破滅”だと聞かされても、そこに光が射す可能性が”0”でない限り、目指し続けるという信念により、リング上で絶命しても本望である。
”我の魂、生涯不変、成り”と周囲に抗い自分には抗えず宣言した。
これでいいんだろうか?ファンとして見守るしか術のない僕は復帰戦の映像を見て複雑な涙が込み上げてきた。
立場が置き換わり親友、親族ならば諸手でこの路を後押しできただろうか?と自問する。
試合後、辰吉が控え室へと戻った映像に懐かしい顔が出てくる。かつて辰吉を完膚なきまでに叩きのめした最強の王者ウィラポンが激励に訪れていた。当時、最強ボクサーと信じて已まなかった辰吉の玉砕ぶりに「日本人は誰もウィラポンに勝てない」と諦めた。
しかし、辰吉が休んでいる間に長谷川穂積がウィラポンから王座を奪取してから、皮肉にも辰吉の復帰戦が行われたつい10日前に7度目の防衛を果たしたばかり。
果して長谷川まで辿り着けるという一縷の望みが叶う隙間があるのだろうか?
もう、心から応援していた僕も分からなくなった。
タイでのランキング1位となった辰吉丈`一郎はこの3月8日に復帰第二戦となる正念場を迎える。
ボクシングを愛した男の今度の相手は生半な選手ではない。
期待はするが、こんなに切なく身に抓まされる思いで待つ試合は無い。
”あしたのジョー”の様に燃え尽きないでくれと無事を祈るのみ。
闘議(とうぎ)U魂 -Dynamite!!2008- |
u-spirit 2009.01.15 |
青木の激勝後、暗転してサンダーバードのテーマと共にエンドロールが流れる。
”お祭はここまで”
これから執り行われる最後の試合は、格闘技ではなく決闘だ。心の準備はできているか?と言い聞かせる様に
Are You Ready
For The Match?
”U”の哀歌とも挽歌とも言える煽りVTRが流れ始める。映し出された田村は言葉を搾り出す度に顔を歪めている。映し出された桜庭は蔑んだ目で表情が強張っている。人の心底に潜む虚しさと疎ましさを剥き出しに晒す2人僕らが見守ってきた夢の舞台裏を穿る心地悪い内容に悔しくて涙が込み上げてくる。
何故、今更そんな事を言うんだ。そんな小さな事にいつまで、拘っているんだ。
あまりに残酷で物悲しい映像に僕は天を仰いだ。一定の理解を示そうとする田村に対して、その歩みや存在さえも完全に否定する桜庭はプロレスラーとして、あるまじき発言まで口にする。
「3回目はプロレスです」
何のためだ?誰のためだ?「記録はプロレスとしての勝敗だ!僕は負けていない!」と言いたげに田村潔司を怨むあまりに、存在を認めたくないあまりに、UWFさえも、自分の歩んできた道さえも、そして当時のファンさえも否定すると言うのか?後になって訂正するのは、当時から僕らが忌み嫌ってきた大人たちがしていた事。この期に及んで後付けの説明など誰も欲していない。
そして、桜庭の朋友である下柳は”U”の象徴であるレガースを付けて影武者として入場する。僕から見ればその全てが冒涜に感じた。阪神の帽子を粗雑に振り回しながら格闘家が始球式をしたら、阪神ファンと下柳本人はどう感じるだろう。想像力に欠ける思い遣りのない行動には呆れた。後から本気でレガースを着用して入場してきた田村と比較して、どちらに夢を見れたのかは言うまでもない。そして、禁断のゴング、無念さと多くの何故?が込み上げる。
何故、プロレスラーなのにプロレスを蔑むのだ。
何故、レガースを着けるフリをしたんだ。
何故、レガースを着けて試合をしたんだ。
何故、田村が桜庭の顔面を殴っているんだ。
何故、桜庭は打開の策ひとつ出せないんだ。
何故、決着がつかない試合をしたんだ。
何故、闘ってしまったんだ。
ゴツゴツと田村の拳骨が桜庭の頭蓋骨にぶつかり場内に鈍く響き渡る。不似合いな田村の鉄槌が振り下ろされる度にUを追い駆けたあの頃が消えていく気がした。田村に対して不満をブチ撒け続けた桜庭は、口だけの男なんかではない。もっと、動けた。もっと、出来た。なのに、大嫌いな先輩に顔面を素手で殴ってやりたいとまで言い放った田村に、ただ殴られていた桜庭は試合後、大して悔しがりもせずに、おどけた笑顔で「もう一回お願いします」と田村に語った。
「プロレスラーは本当は強いんです!」
声を大にして代弁してくれたあの日から、桜庭和志は我々のヒーローとなった。あんなに大きかった桜庭和志という男が今はこんなに小さく見える。
「真剣勝負で実績もないのに」
そうかもしれない。そうだったかもしれない。ベクトルが少し違っただけじゃないか。桜庭よ、それによって何を失ったかまだ、気付いてないのか。あの当時を批判するなら、問うてみたい。会社が潰れそうな時、手を貸さなかった裏切り者?じゃあ、その会社は今、どうなったんだ!そして、師従した高田延彦との現在の関係はどうなんだ!外野から同じ様に陰口叩いている奴らに今、どこのリングからオファーがあると言うんだ!勇気なく、恐れをなし、俯いてただ、先輩にしがみ付いて不動であった者ばかりが口を開いて喚いている。憂き目を見れない不徳な自分を省みず、因果として八つ当たり気味に田村潔司の名を出すな。
悪趣味だ。こんな夢の欠片も無い試合など二度目は不要だ。プロレスラーとしての鉄則は、けしてファンに醜態を晒さない。生き様ではなく無様な姿を晒すなら、あの頃、僕らが否定した”大人たち”と一緒じゃないか。夢を魅せてくれるから、プロレスラーが、UWFが好きだったんだ。日本人の武蔵にブーイングまでして、KOされると飛び上がって喜んでいた刺激要求集団は罪を感じず桜庭和志に吐き捨てるだろう。
「もう、終わった」
格闘技は殺し合い?格闘技はなんでもあり?
それなら、繁栄しなくていい。誰かに踊らされ犠牲を見ながら盛り上がる間抜けな心無い人間に僕はなりたくない。これまでと同じく、田村潔司の背中の夕陽だけを追いかけて行こう。
”お祭はここまで”
これから執り行われる最後の試合は、格闘技ではなく決闘だ。心の準備はできているか?と言い聞かせる様に
Are You Ready
For The Match?
”U”の哀歌とも挽歌とも言える煽りVTRが流れ始める。映し出された田村は言葉を搾り出す度に顔を歪めている。映し出された桜庭は蔑んだ目で表情が強張っている。人の心底に潜む虚しさと疎ましさを剥き出しに晒す2人僕らが見守ってきた夢の舞台裏を穿る心地悪い内容に悔しくて涙が込み上げてくる。
何故、今更そんな事を言うんだ。そんな小さな事にいつまで、拘っているんだ。
あまりに残酷で物悲しい映像に僕は天を仰いだ。一定の理解を示そうとする田村に対して、その歩みや存在さえも完全に否定する桜庭はプロレスラーとして、あるまじき発言まで口にする。
「3回目はプロレスです」
何のためだ?誰のためだ?「記録はプロレスとしての勝敗だ!僕は負けていない!」と言いたげに田村潔司を怨むあまりに、存在を認めたくないあまりに、UWFさえも、自分の歩んできた道さえも、そして当時のファンさえも否定すると言うのか?後になって訂正するのは、当時から僕らが忌み嫌ってきた大人たちがしていた事。この期に及んで後付けの説明など誰も欲していない。
そして、桜庭の朋友である下柳は”U”の象徴であるレガースを付けて影武者として入場する。僕から見ればその全てが冒涜に感じた。阪神の帽子を粗雑に振り回しながら格闘家が始球式をしたら、阪神ファンと下柳本人はどう感じるだろう。想像力に欠ける思い遣りのない行動には呆れた。後から本気でレガースを着用して入場してきた田村と比較して、どちらに夢を見れたのかは言うまでもない。そして、禁断のゴング、無念さと多くの何故?が込み上げる。
何故、プロレスラーなのにプロレスを蔑むのだ。
何故、レガースを着けるフリをしたんだ。
何故、レガースを着けて試合をしたんだ。
何故、田村が桜庭の顔面を殴っているんだ。
何故、桜庭は打開の策ひとつ出せないんだ。
何故、決着がつかない試合をしたんだ。
何故、闘ってしまったんだ。
ゴツゴツと田村の拳骨が桜庭の頭蓋骨にぶつかり場内に鈍く響き渡る。不似合いな田村の鉄槌が振り下ろされる度にUを追い駆けたあの頃が消えていく気がした。田村に対して不満をブチ撒け続けた桜庭は、口だけの男なんかではない。もっと、動けた。もっと、出来た。なのに、大嫌いな先輩に顔面を素手で殴ってやりたいとまで言い放った田村に、ただ殴られていた桜庭は試合後、大して悔しがりもせずに、おどけた笑顔で「もう一回お願いします」と田村に語った。
「プロレスラーは本当は強いんです!」
声を大にして代弁してくれたあの日から、桜庭和志は我々のヒーローとなった。あんなに大きかった桜庭和志という男が今はこんなに小さく見える。
「真剣勝負で実績もないのに」
そうかもしれない。そうだったかもしれない。ベクトルが少し違っただけじゃないか。桜庭よ、それによって何を失ったかまだ、気付いてないのか。あの当時を批判するなら、問うてみたい。会社が潰れそうな時、手を貸さなかった裏切り者?じゃあ、その会社は今、どうなったんだ!そして、師従した高田延彦との現在の関係はどうなんだ!外野から同じ様に陰口叩いている奴らに今、どこのリングからオファーがあると言うんだ!勇気なく、恐れをなし、俯いてただ、先輩にしがみ付いて不動であった者ばかりが口を開いて喚いている。憂き目を見れない不徳な自分を省みず、因果として八つ当たり気味に田村潔司の名を出すな。
悪趣味だ。こんな夢の欠片も無い試合など二度目は不要だ。プロレスラーとしての鉄則は、けしてファンに醜態を晒さない。生き様ではなく無様な姿を晒すなら、あの頃、僕らが否定した”大人たち”と一緒じゃないか。夢を魅せてくれるから、プロレスラーが、UWFが好きだったんだ。日本人の武蔵にブーイングまでして、KOされると飛び上がって喜んでいた刺激要求集団は罪を感じず桜庭和志に吐き捨てるだろう。
「もう、終わった」
格闘技は殺し合い?格闘技はなんでもあり?
それなら、繁栄しなくていい。誰かに踊らされ犠牲を見ながら盛り上がる間抜けな心無い人間に僕はなりたくない。これまでと同じく、田村潔司の背中の夕陽だけを追いかけて行こう。
闘議(とうぎ)忘れ物 -田村vs船木戦決定- |
u-spirit 2008.03.28 |
田村潔司 vs 船木誠勝。
なんだか、そんな気がしていた。主催者にすれば、GPの日本人対決は、必ず次戦にどちらかかが生き残る都合のいいカード。PRIDEの時代から多用してきた手法:”リスクヘッジブッキング”。理由はどうあれ、田村潔司ファンである僕にとって、このカードは、とても意味がある。出来るならば、もっと早く実現させて欲しかった悲運な組み合わせ。
田村潔司の歴史の中で、唯一、登頂していない山、それが船木誠勝だった。田村が初めて見た船木は遥か尾根に写ったに違いない。同じ年齢なのに、田村が新弟子で入門したUWFでは、既に中核を担っていた大先輩。当時、天才と呼ばれていたのは船木の方だった。憧れた遠き山の麓に辿り着こうと、必死に鍛錬を重ねるも、負傷し復帰した直後に船木という山は忽然と田村の目の前から姿を消した。あの日から、二人は一度もリング上で交わる事が無かった。田村はアタックするチャンスさえ手に出来なかった。
前田日明と言う断崖から何度も落とされ、最後は死にもの狂いで登り切り、高田延彦という聳え立つ高嶺に流れ星の如く、閃光の一殺で凌駕した田村潔司。越えるべき”師”は越えてきた。だが、越えるべき”先輩”が残っていた。もう、誰もが忘れかけていた。互いの路で、船木が強かった頃、田村も強かった。どうして、あの時…。過去を怨んでも仕方ないのは、承知の上、どうしても交われなかった”U最高の遺伝子”と”U最後の遺伝子”が『U最強の遺伝子』を賭けて対峙するには、あまりに遅すぎた。
前田日明と船木誠勝が和解し対談した頃から、この”DNA”対決が決まる”予感”はあった。しかし、それは同時に10カウントの始まりを意味する。憧れ続けた”U”の終焉が確実に近付いてくる。Uの魂を、”最強”を、屈する事なく守り続けた田村潔司のフィナーレの幕が上がってしまう。田村潔司よ、答えは見つかったのか?いや、僕も目を逸らさず立ち会って見つけよう。最後に控える”越えてもらうべき後輩”との『U完結試合』に向けて。
Uオタクと笑いたいなら、笑えばいい。君らが精々、乳児の頃に、先輩に楯突いて真剣勝負の理想郷を進言した船木誠勝と何事にも屈せず、先輩の理想を貫いてきた田村潔司。這いつくばって生きてきた”男”の生き様は、たとえ、君達には無様に写っても、僕にとっては最強にしか見えない。彼らが居なかったら、今は無い。彼が居たから、先が有る。血と汗を流してきた背中に、途中から口出しないで一緒に見てくれ。何かを感じるさ。
なんだか、そんな気がしていた。主催者にすれば、GPの日本人対決は、必ず次戦にどちらかかが生き残る都合のいいカード。PRIDEの時代から多用してきた手法:”リスクヘッジブッキング”。理由はどうあれ、田村潔司ファンである僕にとって、このカードは、とても意味がある。出来るならば、もっと早く実現させて欲しかった悲運な組み合わせ。
田村潔司の歴史の中で、唯一、登頂していない山、それが船木誠勝だった。田村が初めて見た船木は遥か尾根に写ったに違いない。同じ年齢なのに、田村が新弟子で入門したUWFでは、既に中核を担っていた大先輩。当時、天才と呼ばれていたのは船木の方だった。憧れた遠き山の麓に辿り着こうと、必死に鍛錬を重ねるも、負傷し復帰した直後に船木という山は忽然と田村の目の前から姿を消した。あの日から、二人は一度もリング上で交わる事が無かった。田村はアタックするチャンスさえ手に出来なかった。
前田日明と言う断崖から何度も落とされ、最後は死にもの狂いで登り切り、高田延彦という聳え立つ高嶺に流れ星の如く、閃光の一殺で凌駕した田村潔司。越えるべき”師”は越えてきた。だが、越えるべき”先輩”が残っていた。もう、誰もが忘れかけていた。互いの路で、船木が強かった頃、田村も強かった。どうして、あの時…。過去を怨んでも仕方ないのは、承知の上、どうしても交われなかった”U最高の遺伝子”と”U最後の遺伝子”が『U最強の遺伝子』を賭けて対峙するには、あまりに遅すぎた。
前田日明と船木誠勝が和解し対談した頃から、この”DNA”対決が決まる”予感”はあった。しかし、それは同時に10カウントの始まりを意味する。憧れ続けた”U”の終焉が確実に近付いてくる。Uの魂を、”最強”を、屈する事なく守り続けた田村潔司のフィナーレの幕が上がってしまう。田村潔司よ、答えは見つかったのか?いや、僕も目を逸らさず立ち会って見つけよう。最後に控える”越えてもらうべき後輩”との『U完結試合』に向けて。
Uオタクと笑いたいなら、笑えばいい。君らが精々、乳児の頃に、先輩に楯突いて真剣勝負の理想郷を進言した船木誠勝と何事にも屈せず、先輩の理想を貫いてきた田村潔司。這いつくばって生きてきた”男”の生き様は、たとえ、君達には無様に写っても、僕にとっては最強にしか見えない。彼らが居なかったら、今は無い。彼が居たから、先が有る。血と汗を流してきた背中に、途中から口出しないで一緒に見てくれ。何かを感じるさ。